2022.9.マルツナガルは跳んで飛んで弾けた!
私たちにとって、とてつもなく刺激的な初秋が過ぎようとしています。
あっという間にあの日々のことが簡単に押し流されてしまいそうだから、自分たちの言葉で文字にして記録しておこうと思います。
ここ最近で私たちに起こったこと
2022年9月は色々と非日常なことが起こりました。
中でも大きな出来事は、三重いなべ市桐林館喫茶室での作品展と HERALBONY × HAND のアートドレスに採用されたこと。
三重に行った足で、東京の販売イベントに伺うというハードツアーで全国を横断しました。
アートドレス販売に際して制作までの経緯
ヘラルボニーという会社を始めて知ったのは2年ほど前で、Twitterアートマスクの投稿ででした。
日本中がコロナで重苦しい雰囲気になっていた中、その空気を吹き飛ばすような美しいマスクと、そこに添えられたメッセージの爽やかさに度肝を抜かれました。
ちょうどその頃、桐林館喫茶室の金子さんとも知り合うのですが、ある日、金子さんから「ヘラルボニーがはじめて作品募集しているから、出してみたら。ふうちゃんのアートがのったら絶対いいと思うよ!」と言われ、応募します。
まさかの最終候補に残りました。
それを最初のご縁に今回「ワンピースの柄にという案件が来ています」と、再びご連絡があったのです!
時折ご連絡をいただきながら楽しみに思いつつ、私たちも最後の最後までどんなデザインか知らないままでした。
そして、直前にSNSなどでドレスのコンセプトやHANDディレクターのエルさんやヘラルボニー代表の崇弥さんたちの熱い想いが次第にオープンになっていくと、初めてどれだけこの1着がこだわりの渾身のものかわかってきます。
えらいところにアートがのってしまった!と正直思いました。
ドレスとの対面&イベントでのfuco:
渋谷スクランブルでの発売初日に、fuco:と彼女の妹と伺いました。
前日は三重でイベントだったので名古屋泊り、朝ホテル出て、駅で長い行列に並び切符キャンセルして取り直し(台風にやられ...)新幹線で移動、渋谷を目指したらもうギリギリの時間。
fuco:にあれこれ説明する余裕もなく会場にいき、担当の深澤さんやHANDエルさんとリアルで初対面を果たします。
fuco:はいつものようにスタスタと歩いていって、売り場のセンターに置いていただいた机の前にどかっと座りました。お仕事スタートです。
そこからは時折手が止まることもありましたが、席を立つこともなく、アート制作をしつつ、お客様が来られるとうかがった(妹がサポート)お名前をカードに書き、ご要望があるといつもの小さなピースサインをして写真撮影を一緒にしていました。
住んでいる佐賀にはないような雑踏の中、3時間ずっとです。
時間になったら、スタッフさんたちとも写真を撮り、後ろ手にバイバイをしてその場を後にしました。
また完全にやられました。想像以上の見事さでした。
この出来事でyasuco:の感じたこと
このドレス販売は、私たちが尽力して起こりえた出来事ではなく、ある日飛び込んだとびきりサプライズなギフト。
ドレスにのった想いを作った人と知り合う、ありえないくらい沢山の人にアートもみてもらえる、体験したことのない場所でのイベントを経験する、喜んでいただいている人と彼女が過ごす、それをどう自分たちがどう感じるか全く想像できませんでした。
販売されていた売り場は、スタッフさんが皆アートドレスを身に纏って、それはそれはその場が輝くような明るさでした。
彼女のアートでなくても目が留まるような美しいドレス。
エルさんが作りたかった、
" 纏う人も接する人も明るく前向きな気分になれる、景色の主役になる1着。日常を特別にするドレス。"
そこに彼女のアートがある理由は確かにあると思いました!
そしてイベントに呼んでいただいた彼女自身もアートやサインをし、写真撮影をし、ヘラルボニーやハンドのファンの方に喜んでいただけるような役割を十分に果たしました。
感覚の過敏さがあったり、見通しの効かない場面を不安に思う特性がありながら、役割を楽しむように軽々とやってのけました。
なのにどうして母として戸惑ったのでしょう。
それは私たちにとって、あまりにもいつもと違うポジションだったからかもしれません。
自閉症児という二十数年の子育ての中では、皆んなはできるけど彼女にはできないことが常にあったし、彼女は常にしてもらったことに対して「ありがとう」という立場が多かったです。
今回は全く逆。今回彼女のアートが載ったドレスは必要とされてそこにあり、彼女自身も役割を理解してイベントに参加していました。
彼女は障害が重いがために自分が自閉症であるとも、障害者とも知らないし、全く意識していません。
何なら21歳になっていることも知らないです。いつもと変わらず軽やかで躊躇ない彼女のままでした。
ここにはハッとさせられました。
彼女を求めてくださることも彼女の可能性も、私にとっては自然に確信できる場だったのです。
イベント終了後の彼女とその変化
なかなかなハードスケジュール後、疲れを感じることも全くなく、明らかに生き生きとしてパワフルさも増していつもの日常に戻りました。
充実感満足感が溢れています。
帰宅して程なく、アートドレス見せびらかしツアーにあちこち出かけたのですが、これまた非常に嬉しそうでした。
スーパーにもそのまま意気揚々と行って、異彩を遠慮なく撒き散らかしています。
月末には母が翌月のスケジュールをカレンダーに記入して渡すのですが、いつもより早く書いてくれとうるさくせがんでいました。
きっと、来月もワクワクイベントが!と期待したんでしょうね(笑)。
もともと睡眠障害があり、夜中に起床して、家中のカーテンを3時とかに開けて回ったり、すっかり落ち着きました。
最近は早く目が覚めても家族が起きるまで布団の中でじっと待っているようです。
これはすごい変化!新しい経験をするたびに水を得たように成長していきます。
これから私たちが目指したいこと
自閉症だからとか、障害があるからは勿論、遠いからとか実現しそうにないとか関係なく、彼女の好きそうなことは次から次へと体験させてやりたいです。
難しいことはどうしたら叶う?から逆算したり、皆んなにしたいんだけどって言ってみてもいいかもしれない。
風が吹くように水が流れるように、彼女の勢いにのって素晴らしいことだけでなく、くだらないことも意味がないことも無駄なことも沢山沢山経験できたらいいと思います。
人生って本当はそんなものじゃなかったかなと。
明日はどんなことができるんだろうとカレンダー見るのが楽しみだなんて素敵だし、今日は誰に会うんだろうと待ち遠しいくらいの、沢山の登場人物が彼女の人生に現れてくれたらいい。
そんな当たり前のことをもっと彼女と願おうと思いました。
余談となりますが、今回の旅へ高校生の妹も同伴しました。
fuco:を見ていてくれたり、お客様に聞かれたら姉のことを話したりしながら、貴重な体験を沢山させていただきました。
「楽しかった!」と言っていて、こちらもイベント後生き生きと過ごしています。まだfuco:には7歳下の弟もいます(笑)。
そのうちにきっと彼も姉のアートを通じた姿を見ることで社会勉強をさせてもらい、自分の人生へと揚々と漕ぎ出すことでしょう。
障害のある姉が兄弟にとって重荷なのではなく(私はその立場でないのでいつもそんな気持ちになったら受容したいと思ってますが)、背中を押してくれるようなポジティブなエネルギーになるなんて!
アートドレスは私たち家族にとっても素敵な記念になりました。
この1着がヴィンテージになる頃、家族一人一人もそれぞれの場でとびきり輝く人生を歩めていることを、今強く信じています。
ヘラルボニーは勿論ですが、HANDのエルさんのドレスへの想いへの言葉にもグッときました。
リスペクトを込めてイベントにはHANDのブラウスでうかがったyasuco:。
「派手で目立っていけない理由なんてどこにもない」のエルさんの言葉を励みに、躊躇しないようアートドレスとHANDの洋服を並べたいと思います。
ご両者とのコラボに招いていただいてとても幸せでした。
関係してくださった全てのに皆様に心から感謝申し上げます!